よりどりインドネシア

2018年06月23日号 vol.24

輪になって踊ろう、ポソのデロ小史(松井和久)

2018年06月23日 18:27 by Matsui-Glocal
2018年06月23日 18:27 by Matsui-Glocal

●テロで有名になってしまったポソでデロは生まれた

中スラウェシ州ポソといえば、この20年ぐらいは、イスラムを名乗るテロリストの拠点である、危険な場所として有名になってしまいました。

20年ほど前に、ジャワ島などからポソへ移ってきて住みついた集団が彼らであり、その後、彼らが様々な事件を引き起こしていきました。この集団はポソの地元民のコミュニティとはほとんど交わらなかったものの、彼らの存在によって、キリスト教徒とイスラム教徒との対立感情が引き起こされ、暴力的な衝突が何度も起こってしまいました。

テロリスト集団は山間部へ逃れ、警察による摘発が進んで、勢力を維持することは難しくなっています。これにより、ポソやテンテナなどの都市部の治安は回復し、現在では、平穏であり、治安上の危険もないといってよい状態です。

それまでのポソは、とても平和な場所でした。筆者は、1991年8月と2001年1月にポソを訪れましたが、前者の平和な場所というイメージと、後者の宗教観対立で緊張したイメージとが、とても対照的でした。

1991年8月、当時訪れていた、ポソ湖のほとりで聞こえてきた音楽がカランバガン(karambangan)という名の素朴な音楽でした。この音楽とともに、地方言語であるパモナ語で朗々と歌う男性の伸びやかな声が印象に残りました。

その音楽を流していた店に立ち寄り、「何の音楽なのか」と尋ねると、「これでデロを踊るのさ」という答えでした。

デロ? それは何? これが私とデロとの出会いでした。

デロを踊る様子。(出所)http://abirlaely123newblogaddres.blogspot.com/2017/03/10-tari-tradisional-sulawesi-tengah.html

今、ユーチューブで、「デロ(Dero)、ポソ(Poso)」で検索すると、たくさんの動画が出てきます。その多くは、現代のデロであり、テンポが速く、ディスコ調のものさえあり、電子オルガン伴奏で、パモナ語ではなくインドネシア語で歌われています。

参考までに、現代版デロのリンクを二つ貼っておきます。

Lagu Irama Dero Poso 2 https://www.youtube.com/watch?v=LuMAs6311-g

JANJIMU JANJIKU || DERO POSO TERBARU 2017 https://www.youtube.com/watch?v=qLOIph-5-OM

現代版デロは、人々が輪になり、手と手をつなぎ、それを揺らしながら、音楽に合わせて、ひたすら踊り続ける、という形態です。通常は、夜8時頃から始まり、午前4時頃まで踊り続けます。

しかし、以前のデロはそれとはずいぶん毛色の違うものでした。そして、現在のデロの形態になるのには、実は、日本が関わっているのでした。いったい、それはどういうことなのでしょうか。以下で明らかにしていきます。

 

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