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2018年04月08日号 vol.19【無料全文公開】

スラバヤの新バスは運賃をゴミでも支払える(松井和久)

2020年04月18日 14:01 by Matsui-Glocal

2018年4月、スラバヤで新しい公共交通機関としてのバスが運行を開始します。このバスには、運賃をゴミでも支払えるという、ユニークな仕組みが導入されます。いったい、それはどのようなものなのでしょうか。

それに触れる前に、スラバヤの公共交通機関の現状について解説しておきたいと思います。筆者はかつて、スラバヤで2年間生活しましたが、そのときの印象では、他の都市に比べて、スラバヤの公共交通機関の存在が見えないと感じていました。

●公共交通機関の存在が見えない

以前、スラバヤに住んでいたときは、基本的にタクシーで移動していました。スラバヤのタクシーはブルーバードとアストラ系のオレンジが二大勢力で、ほかにも、かつてタクシー会社として最初に上場したゼブラや南スラウェシ出身のボソワ・グループの持つボソワなど多数あります。

スラバヤの目抜き通り

タクシー移動で生活上や仕事上、困ったことはとくになかったのですが、街歩きをするようになって、はたと気づきました。バスや乗合などの公共交通機関がすぐに見つからないのです。

スラバヤに公共交通機関は存在します。バスは、国営ダムリが19系統を運行し、冷房バスも走っています。ダムリ以外の民間会社のバスもあります。また、系統ごとに色分けされた「リン」と呼ばれる小型乗合(ジャカルタのミクロレットとほぼ同じ)も、調べると、計60系統以上走っていることが分かりました。しかし、その存在が見えないのです。

●公共交通機関の数が急減

実は、公共交通機関の台数がここ数年、減少しています。2013年6月2日付『テンポ』誌(東ジャワ版)によると、バスは2008年の250台から2011年には167台へ、「リン」は同じく5233台から4139台へ、それぞれ急減しています。

リンと呼ばれる小型乗合

対照的に、自家用二輪車・四輪車の台数は、そのわずか3年間に140万9360台から699万3413台へ激増しています。経済成長に伴う所得上昇は、スラバヤの人々に二輪車や四輪車の購入を促し、公共交通機関ばなれを急速に引き起こさせたといえるかもしれません。

●かつてのスラバヤは路面電車の町だった

もともとスラバヤは、公共交通機関が大きな役割を果たした町でした。オランダ植民地時代の1881年から約100年間、市内を路面電車や蒸気路面列車が走り、人々の足となっていたのです。

モータリゼーションの進行とともに、路面電車や蒸気路面列車は交通渋滞を引き起こすと敬遠され、バスに取って代わられました。

1980年代に筆者が訪れたスラバヤには、その頃のジャカルタと同様、ボルボ製やレイランド製の二階建てバスが走っていました。もちろん、ベチャの台数は今よりはるかに多かったし、一時期、バジャイもこの町を走っていました。

グベン駅の前にたむろするベチャ

●スロトレムとボヨレール

二輪車・四輪車台数の急増により、スラバヤもジャカルタのような渋滞に直面しています。このため、スラバヤ市政府は、2015年の開業を目指して南北線(トラム「スロトレム」)と東西線(モノレール「ボヨレール」)を組み合わせた公共交通機関の整備を計画しています。

公共交通機関が退化した町・スラバヤで、「スロトレム」と「ボヨレール」が自家用車利用者を本当に引き込めるのかどうかは疑問です。タイミングとしては遅すぎた感が否めないからです。

スロトレムとボヨレール

●運賃をゴミで支払える新バスを投入

スロトレムとボヨレールがなかなか進捗しないなかで、スラバヤ市はようやく新しいバスを投入することを決定しました。トランス・ジャカルタのようなバスなのですが、他にはないユニークさを持っています。

それは、バスの運賃をお金ではなく、ゴミで支払う、という方法を全国で初めて導入するのです。

4月3日のリスマ市長の説明によると、バス・スロボヨという名のこのバスは4月中に8台が導入される予定で、長距離バスとの乗り換え場所であるプラバヤ・ターミナルからジュンバタン・メラ・プラザまでのルートで運航されます。電子マネーでの支払いを可能にし、結果的にそれをゴミでも支払えるようにする、ということです。

スラバヤで導入される新バス(出所)https://nasional.tempo.co/read/1077209/wali-kota-surabaya-tri-rismaharini-luncurkan-suroboyo-bus

まさか、バスに乗るのにゴミをバスへ持ち込む、という話ではありません。報道を総合すると、ゴミ銀行と関連付けるようです。

ゴミ銀行とは、「ペットボトル1本いくら」という形で、家庭などから持ち込まれたゴミを一定基準で買い取り、それを業者などへ売る機能を持ちます。ゴミ銀行へゴミを持ち込んだ住民は、買取額を現金でもらうのではなく、ゴミ銀行の発行する通帳に買取額が記載されます。住民は、この通帳を使って、電気代を支払ったり、日用品を購入したりできるのです。

おそらく、このゴミ銀行の通帳とスマホによる電子マネーアプリとを関連付けて、その残高にゴミ銀行の残高を反映させるような仕組みなのでしょう。

スラバヤ市では1日当り2900トンのゴミが出ますが、そのうち1600トンは最終処分場へ運ばれ、1300トンは市内227カ所のゴミ銀行でリサイクル処理されます。このゴミ銀行の顧客数は1万1059人で、彼らがゴミでバス料金を支払える、ということになります。

スラバヤ市は、最終処分場へ持ち込まれるゴミの量を以下に減らすかに腐心し、家庭レベル・コミュニティレベルでゴミをリサイクルさせるためにゴミ銀行を普及させてきました。それを公共交通機関と結びつけるというユニークなアイディアは、果たして功を奏するのでしょうか。注目してみたいです。 

(松井和久)

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