よりどりインドネシア

2018年02月22日号 vol.16【無料全文公開】

インドネシア国内で決済方法が変わる!? (大島空良)

2020年04月18日 13:50 by Matsui-Glocal

去年、中国に行ったときの話です。

インターネットで知っていた通り、中国は現在、WeChat Pay(微信支付)もしくはアリペイ(支付宝)と呼ばれるサービスを通じ、アプリの中のQRコードを通じてすべての決済が行われていました。

すべて、というのは乗り捨ての自転車を使うとき、屋台でおやつを買うとき、カフェでコーヒーを飲むとき、自販機からコンビニまですべての支払いがQRコードを通じて行われるのです。

使い方はいたって簡単。アプリを立ち上げて金額を入力し、バーコードを読み取るだけで、数秒もかからずに決済が行われます。

スマホ以外に特別な機械はいらず、お店側は紙に印刷したQRコードを置くだけ。

簡単なうえにコストもかからず、従来の決済より大幅なプロセスの短縮が可能になり安価なサービス提供が可能になりました。

中国では国内の銀行口座と情報が紐付けられており、個人間でお金の送金やECサイトでの購入や映画チケットなど、様々なところで決済先を増やし爆発的な普及を遂げました。

日本でも徐々に普及が始まっているこのQRコードを通じた決済サービスですが、インドネシアの露店でも使える将来がもうすぐ来るかもしれません。

今回はそんなQRコードを通じた決済サービスが正式に開始するとのニュース記事の翻訳と、私なりの考察を含めてお伝えします。

★記事を読む前に・・・

<TCash>インドネシア最大手通信会社テルコムセルの決済サービスを取り扱う部署。NFCステッカーを通じた商店での取り扱いやECでの決済、公共料金の支払いなどのサービスを提供してきた。

https://digitalpayment.telkomsel.com/about

2018年1月4日、この部署を新規の子会社として独立させる計画をTelkomselがしているとの報道があった。

<Gerakan Nasional Non Tunai(国内非現金化運動)>

インドネシア銀行通信部署が2014年に発表した声明。

http://www.bi.go.id/id/ruang-media/siaran-pers/Pages/sp_165814.aspx

インドネシア銀行創立69周年に合わせ、安全で確実な非現金決済手段のインフラを整えていくことを宣言した。

●インドネシア銀行、TCash QRコード決済を承認

以下は、下記のニュース記事の翻訳です。

http://tekno.kompas.com/read/2018/02/13/12330007/tcash-kantongi-izin-qr-code-dari-bi

電子決済サービスとして、TCashが「Snap QRコード」をローンチした。NFCステッカーとUSSDプロトコルを使用し、現在普及しているサービスを補強するものとなっている。

Snap QRコードは2017年初めからTCashより宣伝されていたが、2018年初めに、ようやくインドネシア銀行から決済方法として承認が降りた形となる。

「現在すでに3000店でQRコードを使えるようになっている。とくにこの2週間で急激に取り扱いが増えた」と語るのはTCash CEODanu Wicaksana(以下、Danu)。彼にインタビューしたのは2018年2月13日である。

TCash2018年3月末までに1万店でQRコードが使えるようにすることを目標としており、手始めに、南タンゲラン市ビンタロのモダン市場の商人たちを指導し、普及を図っていく。

ビンタロのモダン市場の60人の小商人を対象に、QRコード技術を用いた現金を使わない決済が機能するように、TCash自らが指導する。モダン市場の代表Tri Murhayanto氏は、このシステムにはたくさんの利点があるという。

「商人にたくさんのメリットがある。たとえば、お釣りを用意することなくすぐに決済ができる。それに偽札を掴まされる危険から商人を守ってくれる」

QRコードの登場とTCashの力が組み合えば、商人がもっとたくさんの購買者を引きつけ、商売を伸ばしていくのを助けてくれるだろう」

ビンタロのモダン市場の次の標的は、小売商人と他の伝統市場の商人になる。

TCashのQR決済サービスを使ったイメージ

「小売はHejo-HejoEs Teler 77Gaya GelatoHalal GuysKopi Tukuなどを想定。伝統市場ではマイェスティック市場を考えている」とDanuは言う。

 QRコードは非現金化の中心となるソリューションへ

Snap QRコードを取り扱う商人はNFCステッカーを用いたECD(トランザクション情報をPOSターミナルから発行銀行に電子経路で送信するプロセス)を導入する必要がなく、決済をその場ですぐに完了することができる。

QRコードはデジタル決済の中心となるソリューションであり、商人にとっても導入は簡単だ。政府からの公式な許可を得てQRコードを通じた最新の技術を提供できることを嬉しく思います」

「これによりもちろんデジタル金融エコシステム構築に寄与できるし、インドネシアのGNNT(非現金化運動)の実施にも貢献する。自社のSnap QRコードの拡大に向けては教育、実装、アフターケアの3点が必要だ」とDanuは続けて語った。

●決済サービス申請は数多くの大手から

従来のNFCステッカーシステムの肉付け、とも取れるこの表現から、アプリ内に現金を振り込み、使用するタイプだと予想されていますが、今回の記事で注目すべきは、これがインドネシア銀行から承認が降りたことに他ならない、ということだと思います。

仮想通貨等の管理者のいないものに対しての見解には厳しいコメントが多い反面、非現金化に向けて自分たちで市場をコントロールしたいとの政府の意図が読み取れます。

Telkomselを始め、大手通信会社は国が大株主であり、Telkomselも、株式の51.6%は政府が所有する事実上の国営企業です。

ここからTCashのみを子会社として独立させた場合、どのような形で国が介入していくのかを注目していきたいです。

さて、このQRコード決済を計画していたのはTCashだけではありません。

Go-Jekが取り扱うGo-Payは、すでにQRコードを使った個人間送金などのサービスをローンチしていましたが、普及する間もなくインドネシア銀行からの通告を受けて、サービスを休止してしまいました。

GojekのGo PayサービスからQRコードを使った決済例(出所)https://theinsiderstories.com/wp-content/uploads/2017/12/Photo-Gojek-1.jpg

財閥の一つであり、上場企業のPT. Mitra AdiperkasaはSeibuやSogoを抱えるインドネシア最大手の小売グループですが、自社の決済サービスをインドネシア銀行に申請をしています。

なぜこのような大手企業がQRコード決済を導入したがるのか、様々な理由がありますが、企業から見た利点は、POS(販売時点情報管理)システムに繋がり顧客へのサービスが向上したり、横繋がりで自社のサービス提供ができたりするること、決済手数料で新たなビジネスができることが特徴になります。

一度インドネシア銀行に申請されたものは、ブラックボックスの中に入ってしまい、その後どのような承認プロセスになるのかは不透明ですが、今回のTCashの正式な承認は大きな一歩となりました。

●インドネシア銀行の思惑は?

最後に私なりの考察を。

先日インドネシアのネットで非常に話題を呼んだのが、インドネシア銀行の暗号通貨に対する声明でした。

日本でもコインチェックのハッカー騒動からひとしきり話題になりましたが、インドネシアではその合法性や安全性そのものが問われました。

インドネシア銀行はビットコインを始めとした暗号通貨はその価値の保証となる管理者がいないことなどから通貨として認めず、また、テロリストの資金となる事例やマネーロンダリングの温床となる可能性からも、決済手段や取引としては認めないと声明を発表しました。

インドネシアの株式市場で売買を行う投資家は100万人になったばかりですが、暗号通貨の取引を行う投資家もほぼ同様の人数がいると言われており、このニュースは数多くの投資家たちへ衝撃を与えました(2月14日現在、国内取引所のPT.Bitcoin.idは通常運営をしております)。

株式に興味のある投資家が少ないのか、もしくは暗号通貨への意識が高いのかは定かではありませんが、ここ最近はとくにインドネシアのテックメディアで暗号通貨にまつわる記事を目にする機会が増えました。

インドネシア銀行が唯一決済を認可したTelkomselは、国が大株主の通信会社です。やはり、ルピア保護のため、国が金融回りのサービスを積極的に管理したいようにも感じます。

BRIなど国営銀行が独自の暗号通貨を設計するチームを発足しているという噂話もあります。

インドネシアのお金は粗雑に扱われることが多く、券売機や自販機などにお金を入れても読み込めずに吐き出されることが多々ありますが、すべてがオンラインでやり取りされるようになることは非常に有益であると考えます。

しかし、今まで現金のみを取り扱ってきた小売商たちがいきなりこういったサービスを使いこなせるのか、あまり快適とは言えないインターネット環境のなかで障害はないのか、サービスの普及には数多くの課題が残されていると思われます。

(大島空良)

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