よりどりインドネシア

2018年01月22日号 vol.14【無料全文公開】

アスマット県で麻疹と栄養不良で63人の子供が死亡(松井和久)

2020年04月18日 13:42 by Matsui-Glocal
2020年04月18日 13:42 by Matsui-Glocal

インドネシアの最東端にあるパプア州のアスマット県で、2017年9月から2018年1月16日までに、麻疹と栄養不良で63人の子供が死亡した、というニュースが反響を呼んでいます。

(出所)https://sabikinrahmat.blogspot.jp/2017/05/explore-indonesia_20.html

これは、アスマット県保健局のスティーブン局長による説明ですが、4チームを派遣しての報告であり、チームの活動範囲が広がれば、死者や患者の数はさらに増えることが予想されるとしています。麻疹と栄養不良による死者を含めた患者数は、この時点で471人としています。

現在、患者が発見されていない郡も含め、県内の23郡全部を調査対象として状況把握に努めています。

亡くなった63人の子供のうち、4人は県都アガツの公立病院で亡くなり、残りの59人はファイッ郡、アスウィ郡、プロウ・ティガ郡の3郡の子供ということです。

最初に死者が発見されたのはプロウ・ティガ郡でした。昨年12月に同郡へ入ったアガツのカトリック教会の市況によると、その時点ですでに13人の子供が栄養不良で死亡していたとのことです。

プロウ・ティガ郡から県都アガツまでは、河川交通しか交通手段はなく、スピードボートで3時間、住民の手漕ぎボートだと船上で1泊するほどの距離であり、県都の病院に着く前に子供たちは亡くなったのでした。

また、プロウ・ティガ郡の保健センター出張所(Puskesmas Pembantu: Pustu)には、何カ月も保健士がいない状態が続いていて、発見が遅れました。

こうした交通アクセスや保健人員の不足は、今回の事態が起こらずとも、以前から自明のことであり、そうした状況においても、そうした状況をどのように早期発見するかという能力不足が露呈したことは否定できません。

現場にはすでに、社会省、国軍、東ジャワ州スラバヤ市などから援助物資が届けられています。とくに、ミルク、医薬品、栄養補給品などを含むスラバヤ市からの援助物資が一番早く届いたということです。

国軍は10人の医師を派遣し、県都アガツの公立病院で患者の診察を行うほか、別のチームを現場へ派遣し、10トンの食料や医薬品を配給する予定で、交通アクセスの悪いところへは、ヘリコプターも使用するということです。

社会省は、麻疹ワクチンとインスタント食品1万6000缶を1月14日にジャカルタから送付し、16日には県都アガツに到着しました。また、パプア州政府からは、米3トン、毛布200枚、マットレス200枚、家族用テント2組、食器50セットを送りました。

宗教界も支援に動き出しました。イスラム社会団体のナフダトゥール・ウラマやムハマディヤをはじめ、カトリック教会やプロテスタント教会も、援助物資や医師の派遣などを開始しつつあります。また、福祉正義党(PKS)など政治団体も動き出しました。

(出所)https://kabarpapua.co/kekeringan-di-asmat-bule-beli-air-bersih-rp2-juta/

アスマット県の面積は3万1983平方キロメートル、人口は9万316人で、人口密度はわずか2.8人です。保健施設は病院が1箇所、保健センター(プスケスマス)が13箇所、保健センター出張所が66箇所です。医師数は26人(特殊医3人、一般医19人、歯科医4人)、助産婦が97人、看護婦が198人です。

世界保健機構(WHO)の基準では、1万人当りの医師数が4名とされていますが、アスマット県ではそれが2名に留まっています。主な疾病はマラリア(患者数8737人)と下痢(同7851人)となっています。

 (出所)BPS, Statistik Daerah Kabupaten Asmat 2017.

(出所)http://ulinulin.com/posts/ukiran-indah-suku-asmat

アスマットは、素晴らしい木彫文化を持っており、その作品には深い神秘的なものを感じてしまいます。一度、訪れてみたいところではあります。

(松井和久)

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