よりどりインドネシア

2017年10月22日号 vol.8【無料全文公開】

飽和するジャカルタの日本イベント(大島空良)

2020年04月18日 13:08 by Matsui-Glocal

インドネシアの若者に日本イベントは大人気です。

一部を除いて、日本要素が絡むイベントはコスプレをする若者でにぎわい、毎年名古屋で行われているWorld Cosplay Summitではインドネシア代表が2016年世界優勝をし、インドネシアの若者のポップカルチャーを中心とした日本文化の関心と愛情の深さがうかがえます。

筆者も恥ずかしながら「インドネシアと日本を繋ぐことをしたい!」という意思を持ち、その一つの答えとして日本要素を絡めたイベントを計画しようとジャカルタ市内のイベントの数々に顔を出してきました。

しかしその過程で、あまりにもイベントの数が多すぎること、また、イベントがあまり差別化されていないことなど、参加者たちのリアルな声を聞くことで、現行のジャカルタでの日本イベントの飽和状態に疑問を持ちました。

もっとも、筆者の知識と経験は、特に後述のアニメ・ポップカルチャーイベントが多いので、色々な見識や経験を持つ方々から様々なご意見・ご批判を頂ければ幸いです。

●イベントの種類と入場者の性質

以下は、特に多いと思われる「日本」が関わるイベントを筆者の感覚でカテゴリ化し、列挙してみます。なお、運営が日本人によって行われているかインドネシア人によって行われるかは考慮していません。

1.アニメ・ポップカルチャーイベント

「日本イベント」と言われたときに、大半のインドネシア人が真っ先に連想するのはこのカテゴリでないかと思われます。

Sonyや電通などによって行われる東南アジア最大のポップカルチャーイベント、C3 Anime Festival Asia (C3AFA)、世界コスプレサミットへの挑戦権を争いインドネシア5大都市と巡回するCLAS:Hなどを中心に毎年定期的に行われているのものから単発的な小さなイベントまで様々です。

性質としては、規模の大きいものだとアーティスト、声優、コスプレイヤーを日本のみならず海外から招致し、ファンとの交流やライブを中心に行われることであるといえます。

また、各大学の日本文学科が中心となって行う文化祭は、このモデルを真似て行われるようなケースが目立ちます。実際、こういったイベントが重なるシーズンを狙って、わざわざ公演に来る日本のアイドルグループまでいます。イベントホールや公園など一般開放された場所を使うケースが多いようです。

(縁日祭より。CLAS:Hコスプレコンペティションの出場者たち)

2.観光イベント

インバウンド・イベントとも形容されるもので、格安チケットの増加や日本への観光ビザの緩和などを背景にここ数年で特に数が増えてきました。HISや旅行会社などが中心となり日本各地の観光所紹介、文化紹介などを行います。客層は家族連れや夫婦が多く、他に比べると若干年齢層が高いようです。

Japan Travel Fairなどがこれに該当し、各航空会社のプロモチケットに人が殺到します。 HISやJTBなどの大手がブースを出すのみでなく、日本の各地方の観光会社が宣伝を行うケースもあり、室内なので暑さや時間をあまり気にしなくてもいいのが利点でしょう。モールのイベントホールを借り切ってやるケースが多いです。

3.文化交流イベント

民間同士の交流を大使館やそれに相当する政府省庁が後援をする、非収益事業のイベントです。

特に有名なところでは、南ジャカルタ市公認イベントであるブロックM Little Tokyo縁日祭や、日本大使館後援イベントのJakarta Japan Matsuriなどでしょうか。

太鼓、神輿などが練り歩き、日本のお祭りの雰囲気が味わえ、今年のJakarta Japan Matsuriでは、元JKT48のタレント中川遥さんを始めとした来年の日本インドネシア国交樹立60年親善大使が発表されたのは記憶に新しいものです。

イベントホールや公園など一般開放された場所を使うケースが多く、縁日祭に至っては、8年間にわたり南ジャカルタのブロックMエリア全体がステージ分けされて一般開放されています。

その他にも、様々な形で「日本」が出てくることがありますが、ここではこの3パターンをさらに深く見ていきたいと思います。

●多過ぎ?日本イベント

「この前あのイベントに行ってきたんだけどさ、ブースで会う人もすれ違う人も皆一緒ですぐ帰っちゃったよ」

「あのイベント、回数重ねるごとに企業宣伝色が強くなるし、チケットの値段も上がるし、多分もう行かないかな」

これらは、筆者の周りで、イベントに参加したインドネシア人の友人たちから実際に出てきたコメントです。

もちろん、割合としてはポジティブな意見も多いのですが、今回はあくまでこれら「飽きた」派の意見を取り上げ考察していくことをご了承いただければと思います。

たしかに、毎週のようにジャカルタでは何かしらのイベントが、そこかしこのモール、大学などであり、選択肢が多い分なかなかコンセプトのない物には人が集まりにくく、「飽きた」という声が多いのです。

文化交流イベント以外では、集客には真新しさが必要になります。

観光であれば、さらに安いプロモーションチケット、アニメ・ポップカルチャーイベントでいえば有名な演者、歌手を連れてくることなど。

最近話題性のあったものではAncolで行われたNakama Festivalに日本からDo As Infinityが公演に訪れ喝采を浴びたことでしょうか(しかし、このイベントには出演者へのギャラ未払いなどが問題化されており来年のイベント開催が危ぶまれています)。

しかし、それ以外にも、何か真新しいものが期待されていることを筆者は感じています。「日本イベント・ベテラン」達に目新しさを常に提供し続けるという姿勢が大切だと思います。

裏を返せば、それだけジャカルタの中では日本イベントは認知度が高く、様々な形で日本をプロモーションした結果が実ったものだと想像します。決して、この結果をネガティブに捉える必要はないのです。

(縁日祭より、日本公演に駆け付けた太鼓グループ。ジャカルタの有志も演奏者として集う)

●何を目玉にするか。これからのイベント戦略

数年にわたり日本イベントを中心に撮影をしてきたインドネシア人のカメラマンの見解では、2012年前後はクールジャパン機構から予算が降りやすかったこともあり、インドネシアで非常に人気のロックバンドONE OK ROCK, ラルク・アン・シエル等を呼ぶことが可能で、それを目当てにたくさんの若者が詰めかけたと言います。

しかしそれが何年か経つと、主催者側の予算の都合で上記のようなビッグネームを呼ぶ機会は減ってしまい、ピークを知っている人間からすると近年のイベントの様子は「数ばかりが増え、スケールダウンしている」と感じる人が多いということです。

また、地方ではまだまだジャカルタに比べイベントの数自体が少なく、もっと地方に進出してほしいという声も絶えません。

日本イベントが浸透し、数が増えていることは、ここまで日本とインドネシアの関係を深める取り組みをされてきた方々たちの努力によるものであり、その方々に対して敬意を表するべきであり、誇るべきことでもあります。

しかし、一般客の目線から何がこれから求められていくかというと、イベントの個性であり、いわゆるインスタ映えするものや体験を通じて感動するものあることは間違いありません。

「なんのイベント?また日本か…もういいよ」という目が「面白い!また日本か、やってくれるな!」とインドネシア国内の評価に繋がっていくような催しを開いていければと思うのです。

こういったイベントは、多くの日系企業にとって有効なプロモーションの場であり、進出前に日本への情報感度の高いインドネシアの若者の反応を見るいい機会だと思います。

日本ではつい先日、東京・代々木公園にてインドネシアフェスティバルが行われました。これからは、日本でも、逆にインドネシア関連のイベントが増えていくことを期待したいです。

(大島空良)

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